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突然の良い薫りと共に彼女が戻ってきた、このかぐわしい匂いは知っている、僕の故郷でもポピュラーな飲み物としてある。
「お口に合うかしら」
「大丈夫です、同じような物をよく飲んでいました、ただ久しぶりなので」
小さなカップを片手でつまみ口元へ持っていく、いっそう引き立つ香ばしさについ顔が綻ぶ。
宇宙船内では生体補充ガムしか食べてなかったので味わうと言う感情が蘇ってくると共に空腹感もついてきた。
「コーヒーとクッキーです」
コーヒーを一口啜る、故郷のそれよりも遥かに美味い、それ故にノスタルジックに浸ることは無く、ただ疲れが解けてゆく。
「クッキー、いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
彼女は微笑んで応えてくれた。
この焼き菓子も僕にとっては一口サイズあっという間にとけてなくなる。
甘くて優しい味がした。
「あれ?」
突然僕の目から涙が一つこぼれ落ちると、それをかわきりに一つまた一つとポロポロとめどなく涙は零れた。
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