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「クッキー、この食べ物のせいですか?」
「違うと思います、いたって普通のクッキーですから」
優しく笑ってタオルをくれた。
それを受け取ると彼女は訊いた。
「貴男は本当に異星人なのですね」
柔らかく花の香りがするタオル、彼女と一緒だった。
「そうです。
この星の住人は賢くて、おおらかで、優しい、貴女も」
彼女は僕の前のソファーに座った、僕は話を続けた。
「僕の故郷は遠く、あまりにも永い旅をしてきたので、現時間において多分両親も友達も知人は皆死んでいる事でしょう、僕は独りぼっちなんだと、ふと気づいたら泣けてしまいました」
「もう、帰る事は出来ないのですか」
「宇宙船はまだ静止軌道上にあります、でも復路はさらに時間がかかります、下手すると、故郷の星が終わってしまう程の時間が」
「なんで、そんな旅をしてまでこの星に」
「大義名分はあったのですが、本当は僕の身勝手な希望、どうしても欲しい目的がありました」
「それは?」
「それは、、、」
僕は口を噤んでしまった、彼女もその後黙ったままだった。
もしかしたらこの星に来たこと、この旅自体が失敗だったのかもしれない、どこに行こうと僕は僕のままで、人は決して変わる事などできはしないのだと思った。
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