3/8世界

13/15
前へ
/15ページ
次へ
徐に彼女が口を開いた。 「実は私、このFM局を閉めようと思っているんです」 僕は黙ったまま彼女の話の続きをまった。 「マスコミ関係の仕事をしたい、マスメディアを自分でやってみたい、そんな思いが同じ仲間が五人最初はいました、小さなローカルFM局、ここで自分達の好きな言葉や音楽を流していれば私は良かった、だけど現実はそんなに甘くはない、局を継続するだけでもお金がいる、そのためにスポンサーがいる、局は大きくならなくてはいけない。 少しずつ、少しずつ、変わってゆく理想はいつの間にか全く姿を変えて、残ったのは私一人になりました、私はもう疲れました、そんな時貴男のメッセージを聞きました」 僕が宇宙船から送ったメッセージ。 「半信半疑、ううん、殆ど信じないで緊急用エアポートまで来てみたら、大きな光が落ちるのが見えて、その降りた光の中から人影が、驚いてその場に立ちすくんでいたのです」 ふと思った、これは偶然なのだろうか。 「ハルキさん、貴男がこの星とのコンタクトを望んでおられるのなら、私の知り合いにちゃんとしたテレビ局に務める者がいます、その人を紹介します、メディアを使ってこの国の政府と接触できると思います」 彼女との出逢いは偶然、何億か何万かの偶然なのだろう、だけどもこの気持ちはただの必然なのだろうか? 「だけどもし貴男が、やっぱり故郷の星に帰ると決めたのならば、私を、ハルキさんが良ければ、私を一緒に連れて行ってくれませんか、貴男の旅に」 俯いて口を閉ざした彼女にかける言葉が見つからない。 だから僕は外に出た。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加