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ーーー☆ーーー
ガゴォッ!! と。
くさびを打ち込む音がした。
ーーー☆ーーー
『元の世界の』ルム、サンダー、ユーは今から町のほうへ買い物に行く所であった。
そこへ。
空間をぶち抜き、飛び出す『男』が一人。
というか鬼神であった。
「ユーくうん!!」
ぐちゅり!! と愛くるしくて、大好きで、恋人同然で、ご主人様なユーを蛸(たこ)の足にも似た何かが縛り付ける。鬼神の背中から生えた八本の蛸足は粘着質な液体を分泌しているようでユーの全身がぐちゃぐちゃに汚れていく。その姿は完全にストライクだった。
にへらと表情筋を崩壊させながらも、鬼神は自身がぶち抜いた大穴に飛び込む。ユーを伴って、だ。
「え?」
当然のことに目を瞬かせるルム。そんな彼女の真横の空間が純白に抉られ、そして飛び出す影が二つ。一人は姫川楓、もう一人は東城大和である。
「おい、ここに鬼神が来なかったか!?」
「とっ、東城!?」
「大和、ちんちくりんが連れ去られたが、鬼神は何のつもりであんなことをしたんだ?」
サンダーに問われ、東城は思わず舌打ちをこぼしていた。
「決まってんだろ、最初から提示されていたはずだ! ついに我慢の限界を超えやがった!! このままじゃあの変態ユーを貪り尽くすぞ。いや、奴の性癖を考えると自分を貪ってもらうようユーの魂を堕ちる所まで堕とすのかもな。どっちにしても放っておいたら『そっち系』の泥沼が始まるってわけだ!!」
「な、なんですか、それ!?」
ある意味において『純白』や『漆黒』さえも霞む狂気であった。あの時と違って世界規模の問題というわけではないが、一人の純粋な男の子の魂を欲望の沼に沈めるわけにもいかない。
「くそが。『そっち系の店』から両手で抱えきれないほどの紙袋持って出てきた時はまさかと思ったが、『「純白」の力をある程度掌握した』姫川楓と同じように世界間跳躍ができるとは。つーかあの蛸足絶対『そっち系の』能力あるぞ!!」
「……いつかまたとは思っていたが、大和との再会がこんな形になるとはな」
「そうか? 俺にとっちゃこんなの『いつも通り』だがな。まあ負けたら死ぬとかって話じゃないだけマシではあるが」
言って、拳を握り。
ゴン!! とぶつけ合った男たちが動き出す。
さあ。
究極の変態からユーを救い出せ。
……早くしないと、本当に取り返しのつかないことになるだろう。
ーーー終ーーー
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