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ーーー☆ーーー
全面モザイク仕様であった。
咄嗟にユーの視界を両手で塞いだエリスはファインプレーであっただろう。
「あー……とりあえずは助かった、のか?」
「楓ってあんなに激しいんだ……」
「陽香さーん。なぜに目を輝かせているのかなー?」
吐き捨て、東城はとりあえず無力化できた絶対女王から視線を外す。問題の核となるものを捉える。
「で、だ。ルムの肉体を操るテメェは何者だ?」
「『漆黒』ちゃんだよー」
「理性を焼き切るとかなんとかクソくだらねえもんばら撒いているのはテメェなんだよな?」
「そうだよー。褒めて褒めてっ」
「チッ。人の神経逆撫でするのがテメェの得意技かよ」
会話を続けながらも、東城は高速で思考を回す。
知り得た情報から今後の展開を模索する。
(奴が何者かは知らねえが、姫川楓の時みたいに衝撃を加えれば退けることもできるはず。もし無理でも、気絶させりゃあとりあえずは無力化できる。その間に鬼神や姫川楓の力を使って奴を追い出すことができれば俺たちの勝ちだ)
つまり、
(姫川楓辺りを利用して、あの時と同じように隙を突く戦法でいけば……ん? あれ???)
「サンダー?」
一人欠けていることに気づいた。
その時には、もう、始まっていた。
ゴォッ!!!! と莫大な質量が移動することで空気が拡散される。ルムの背後まで肉薄していた青き怪物が猛烈な速度でもって突撃を仕掛ける。
ーーー☆ーーー
その時。
女騎士はその身を回転させ、漆黒の剣を横薙ぎにし、迫り来る脅威を両断しようとして───ガクン!! とその動きが止まる。
まるで。
敵意を受け、反射的に動いてしまったが、標的を視認して慌てて止めたような挙動で。
「グァアア!!」
叫び、肉薄し、拳を振り上げ。
しかし、サンダーの中に湧き上がるものがあった。
(いや、だな……『例え操られているとしても、ルムを殴るなんて絶対に嫌だ』!!)
いや、いいや。
それだけじゃない。
そう。
惚れた人間を前にして、男の中に湧き上がる欲望は一つしかないだろう。
それは理性が押しとどめるもの。
状況を見極め、封殺するはずのもの。
その理性は焼き切れている。
物語をシリアスに傾ける因子は消失している。
ならば。
恋する二人が辿る結末は一つであろう。
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