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「なあ、陽香」
「なに、大和?」
「さっきまでの絶望的なシリアス展開はどこいった!? なんで俺たちはバカップルのいちゃいちゃ見せつけられているんだ!?」
「血と死に満ちた闘争より100倍マシでしょーよ」
「それはそうなんだが……納得いかねえ! 俺は女風呂を覗いたり、陽香のファンタジックなファッションショーを堪能できなかったのに!! お前たちだけライトノベルジャンルみてえなことしてんじゃねえぞ!!」
「陽香、この変態野郎はここでぶっ潰すのが世のため人のためだと思わないかい!?」
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ルムは解放された。
件のルムが言うには『漆黒』とやらが理性を焼き切る魔法を解除したらしい。根拠も証拠もないが、混在しているルムは『漆黒』の想いを読み取れるとか何とか。
正直、東城には理解不能な領域であったが、確かに先ほどまで彼らを蝕んでいた狂おしいほどの衝動は消失している。とりあえずその辺の問題は解決したものとみなして良いだろう。
だが、
「問題は統一政府の追っ手だな」
「ん? 理性を焼き切る魔法とやらは停止したんだろう。だったら連中がルムを殺す理由はなくなったはずだ」
「サンダー。それはどの『基準』でもって判断した? 相手は統一政府だ。気に食わない奴は徹底的にぶっ壊して『お遊び』ですとのたまう魔法使いの最高峰だぞ。理性を焼き切る魔法を解除したなら許してあげようなんて展開になるか。こーゆーことができると示したルムを何が何でも殺そうとするだろうよ。くそが! 牢屋に突っ込んで正当な罰を与えるってんなら俺もどうこう言うつもりはねえが、狂い狂った時代の横暴がルムを殺すってんなら話は別だよな!!」
「……ふざけた話だ」
「ふざけた時代なんだから仕方ねえだろ」
吐き捨て、東城は生き残るための方針を固める。
「とりあえず身を隠すぞ。ほとぼりが冷めるまでってのは希望的観測が強すぎるか。連中がいつ諦めるかなんて分からねえし、いつまでも根に持つ可能性のほうが高いしな。やっぱりここは鬼神辺りを頼るか。男に変化する魔法で外見を変えれば、何とかなるかもしれねえ」
「いえ。逃避先には心当たりがあります」
そう言ったのはルムだった。
漆黒の女騎士モードのまま(つまり漆黒の羽衣を纏った『だけ』)のルムはこう続けたのだ。
「ボクたちの世界に帰ればいいんです」
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