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「あん?」
「『漆黒』と混在することで分かったことがあるんです」
どこまでも真面目くさって。
ルムはこう言った。
「ボクたちをこの世界に飛ばしたのは『漆黒』なんですよ」
「そういえばルムたちが消えた扉の色は『漆黒』だったな」
「なあ、ルムにサンダー。お前たちの妄想に付き合っている暇はねえんだが」
呆れたようにこめかみに指をぐりぐりと押しつける東城。そんな彼にサンダーはただこう告げた。
「大和、俺たちはこことは違う世界から来たんだ。信じてほしい」
「クソくだらねえ戯言……なんだが、サンダーがそんなしょーもねーこと言わないってのは分かりきってるしなあ。『いつものルール』とは違うもんを振りかざすとは思っていたが、異世界とか飛び出すかよ」
だが、確かに異世界とやらに逃げられるなら、これ以上の逃避先はない。統一政府がどれだけ規格外でも、まさか異世界まで追いかけるほどのチカラがあるとも思えない。
「しかし、そうか。異世界かあ。戻る手段は?」
「『漆黒』はボクたちをこの世界に飛ばすことができます。その力を使えば、逆にボクたちの世界に戻ることだって可能です」
「そりゃそうか。理屈としちゃそう間違っちゃいねえわな」
言って、肩をすくめて。
一歩前に出てきたサンダーを見つめ。
東城は小さく、だが確かにこう告げた。
「またな……って言っていいんだよな?」
「当たり前だろう、大和」
さようなら、ではなく。
またな、と告げた意味は───
ゴン!! とサンダーと大和の拳がぶつかり合う。
それだけで十分だった。
男たちに余計な言葉は必要なかった。
『漆黒』の扉が顕現し。
そして、異界の因子はこの世界から消失した。
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