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姫川楓の乱入で東の魔女が放った追っ手を撃破することができた。あれだけ圧倒してしまうと、ムキになった東の魔女勢力が多くの戦力を投入する可能性が出てくるが、とりあえずは生き残れた幸運を噛み締めるべきだろう。
すでにピエロは撃破した。
終わったことをグダグダ考えるよりは、この先について考えていたほうがまだ生存確率を上げることができる。
「あれっ。その『女の子』大丈夫!?」
純白の髪を靡かせ、姫川楓が力なく地面に横たわる『彼女』に駆け寄る。よりにもよって東の魔女に銃を突きつけた『女』に目立った怪我はなかったが、やはりそれなりの負荷はあったのか、目覚める気配はない。
だから姫川楓は『彼女』へ手をかざした。
溢れる光は治癒魔法であろう。
「う。うあ……ここ、は……?」
数秒もあれば十分だった。
奇跡の力は『彼女』の意識を取り戻す。
「よかったよかった。目覚めたようね」
「貴方は誰ですか?」
「姫川楓。最強無敵の美少女よ!!」
ババン!!!! と効果音でもついてきそうなほどに堂々としたものであった。思わずといった具体に『彼女』は頷いて……バッと勢い良く立ち上がる。近くに落ちていた銃を引っ掴み、周囲を見渡し、例の驚異がいないことを確認して、安心したのか息を吐く。
「ん? なになに、鹿でも見つけた???」
「あの人はいないようですね」
「そりゃあ俺たちがテメェを逃してやったからな」
呆れたように口を挟む東城大和。
『彼女』は彼を見つめ、しばし考え込み、やがて思い出したように声を出す。
「もしかして……あの時助けてくれた人ですか?」
「そうだよ。テメェのせいで絶賛大ピンチなお人だよ」
「大和っち」
「チッ」
嗜めるように陽香に名前を呼ばれ、東城大和は不機嫌そうに視線を逸らす。後は任せると言いたげに『彼女』から距離をとる。
「ごめんね、大和っちってば素直じゃないから。本当は貴女が生きていてくれて喜んでいるのよ」
「そう、なんですか?」
「ええ。今は今後のことを考えているから、他のことに構う余裕がなくて、ちょっと無愛想なだけよ」
それよりも、と。
陽香は切り替えるようにこう続けた。
「せっかくだし、自己紹介でもしましょうか。私は陽香、大和っちが東城大和。で、貴女が姫川楓さんだったよね?」
「楓ちゃんと呼んでいいわ!!」
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