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ああ襲いたいわね、と鬼神は呟く。
あまりに小さい声であったからか、隣を歩くユーには聞こえなかったようだ。
件のルムとやらを探して繁華街のほうまで出てきたが、休日だからか(ついでに夏休みが重なっているからか)どこもかしこも人だらけであるのに、探し人の影も形もなかった。
「見つからないなぁ」
「……うん」
残念そうに、落ち込んだように。
そんな悲しげな様子を見ては黙っていられなかった。
「だ、大丈夫だって! ほら、これでも『私』ってば魔女と王の時代にくさびを打ち込む因子よ。イレギュラーにして天を崩す特異点にして未分類たちの始祖なんだから!! 探し人の一人や二人すぐに見つけてあげるわっ」
「ほんとう?」
「本当よ! この『私』がショタとの約束を破るわけないから信じなさい!!」
「うん。ありがと、お兄さん」
上目遣いで、少し涙ぐんだ瞳で、そんなことを言われては我慢できるわけがなかった。
ぎゅう!! と抱きしめる『まで』で済んだのは奇跡に等しかったであろう。
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「サンダーって《魔女》の呪いで青い怪物にされて、それをルムって人に解いて貰ったけど、効果が半端に残って自在に変身できるようになったってことでいいんだよね?」
「ああ」
「だからあの時『ああ』なったんだね」
「だろうな」
それよりも、と大男は訝しげに『燕尾服の少年』を見つめ、こう問いかけた。
「統一政府の存在や世界に蔓延する慣習についても詳しく聞きたいが、まずこれだけは聞かせてくれ。『ここ』では女にしか魔法が使えないとされていると言っていたが、ならば路地裏での『あれ』は何だったのだ? 魔法以外の超常、つまり『念』を使ったものか?」
「やっぱり勘違いしてるようだね」
呆れたように息を吐き。
『燕尾服の少年』はこう答えた。
「ぼく、女なんだぁ」
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