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「な……っ!? 『エリス』も《魔女》の呪いで性別を変えられたのか!?」
「確かにそういう目的の実験を受けてはいたけど、そこまで深刻じゃないって。見た目で男扱いされることが多いくらいで、そこまで困ったことはないから安心して」
「待て。そういう目的の実験だと?」
「あーそこ気にするんだね。実験ってのはさ、魔法の正体を解析しようってものでね。魔法は女にしか使えない、なら女の定義はどこまでなんだって感じで外見やら中身やら弄られたんだよ」
「ふざけ……ッ!!」
「待って待って。もう終わったことだから、そう怒らないでよ。実験のことも、『彼』の裏切りも、終わったことにしたいから」
そう言われるとそれ以上何も言えなくなる。
ただこの話題を出すと『エリス』は平静を保てなくなるのか、言わなくていい情報まで吐き出していた。
『彼』の裏切り。
そこに『エリス』が暗い光を瞳に宿す理由が潜んでいるのだろう。
ーーー☆ーーー
ここに新たな変態が一人生まれた。
「納得いかねえ」
男好きのアブノーマル認定された東城大和がぼやくが、女の子たちが彼を見る目が変わることはなかった。
変態野郎を置いて、ガールズトークは続く。
「ルムって素材は一級品なのに、装飾で損をしてるっしょー。女の子なんだからおしゃれに気を使わないと☆」
「ボク元男なんですけど」
「今女の子なら問題なし!!」
「ちょっ、やめ、どこに連れていくつもりですか!?」
「美味しくいただくための下準備へレッツゴーっ!」
「……はぁ。昔の大和っちみたいだからって止めようと思わないなんて重症ね」
とんでもない流れが生まれていた。
十中八九東の魔女と敵対してしまっている現状でおしゃれだの何だのといった単語が飛び交っていた。キャッキャウフフなノリが場を支配していた。
自殺志願にもほどがある。
生存の確率を左右する事前準備期間を無意味に消費してしまう。
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