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「ふざっけんなよ、クソ馬鹿どもが! 敵は皇帝だとか王様だとかが霞むほどの『力』を振るう怪物だぞ!! おしゃれなんてクソみてえなもんに浪費する時間なんて一秒たりとも存在しねえんだよっ」
「へいへい東城大和さんよお。女の子に向かってそれはないっしょー。デリカシーなさすぎ」
「デリカシー? そんな無駄なもん捨てたよ。くそったれな時代を『直視』して、それでも大切なもんを守り抜いてやると決意した時にな!!」
「もおー。暑苦しいんだから。よく分からないけど、そこまで言うなら『お母さんたち』にルムを劇的改造してもらうのは諦めるっしょー。そこまで怒っちゃう理由があるみたいだし」
ぴくり、と東城大和の眉が動く。
ある単語に反応する。
お母さんたち?
東の魔女が放った追っ手を軽々撃破した姫川楓を生み出した血縁の所まで行くつもりだった?
あくまで噂や経験則での話だが、血の繋がりは魔法の強弱を左右する。強い魔法使いの子供は強大な魔法を振るうのだ。
つまり。
姫川楓のお母さんも怪物である可能性は高い。
「た、助かりました。あと少しで変態その二に連れ去られるところで───」
「姫川楓え! ルムにとびっきりのおしゃれを施すためにお前のお母さんを頼るぞこらぁ!!」
「……へ?」
「お、おおっ。東城ちゃんってば急に何? まー楓ちゃんとしてはウェルカムなんだけど☆」
「ま、待って! なにこれおかしい。絶対おかしい!」
「はぁ。今の大和っちならそう言うよね。良くも悪くも現実を知ったっていうか、生に貪欲になったっていうか、人を利用することに躊躇がないっていうか」
「東城! お前なら分かりますよねっ。遊んでいる暇はないって、敵はすぐにでもやってくるって! なのに、なんで変態その二の意見に乗っかったんですか、変態その三!!」
「人を変態扱いする男気取りが嫌がるのを見たかったから」
「やっぱり変態じゃないかああああああああ!!」
ノリに合わせて適当に考えた理由を吐き捨てながら、東城大和は瞳に昏い光を宿す。
さあ、ルムを助けるために強いというだけの無関係な魔法使いを巻き込んでやれ。
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