序章 定められし結末に剣を突き立てろ

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1 「ここは……?」 ポンチョに膝が出るくらいのズボンという格好の小柄な『彼女』は困惑したように周囲を見渡す。 老若男女問わず魅了する妙な『色気』が漂う。魔法という超常が支配する時代において類い稀なる美を振り撒く『彼女』はそれだけで出世コースに乗っかることも可能だろう。『無限の可能性の一つにて物語の中心に立つ少年』のように優れた魔法使いを骨抜きにするだけで、世界を支配する力を間接的に振るうことができる。 女尊男卑。 今の時代の定説。 魔法というファンタジーを女であるだけで獲得できるようになった時代にて。 『彼女』は噴水がある公園で迷子のように視線を彷徨わせる。 2 「夏休みだぜベイベーッ!!」 「大和っち、騒ぎすぎ」 「おいおい陽香さんや。夏休みだぜ夏休み! くそったれな女王気取りどもが俺たちで『遊ぶ』よりも他の誘惑に夢中になる期間、つかの間の平穏なんだぜっ。テンション上がるに決まってんだろ!!」 「気持ちは分からないでもないけどさ」 魔法という力は世界を変えた。 女『のみ』が持つ特権は極端な格差を生み出した。 女尊男卑、弱肉強食、大魔法時代。 ニュースなんかでは女の罪を男になすりつけたことが分かりきっているのに無視されるのが『普通』で、整った男がステータス化(金持ちが道楽に収集する絵画などと同じ扱いであると考えていい)されるのが『普通』で、学校の一コマに女が男を痛めつけて楽しむのが『普通』と化した。 世界は理不尽に満ちている。 力こそ、魔法こそすべて。そんな現実を強烈に表しているのが統一政府の存在か。世界統一なんていう夢物語を『一夜にして』成し遂げ、ここ100年問題なく支配を継続している魔法使いの金字塔。トップである絶対女王は世界最強が名乗るものであり、つまりは魔法という力ある者が上に行ける慣習の極致と言っていい(逆に力無き者は人権さえ無視された最下層に落ちることになる)。 魔法さえあれば町でも国でも世界でも支配できる。 そのような女にとって都合がいいルールが蔓延していた。世界を支配する統一政府は狙ってそのような慣習を植えつけた。必然的に魔法的強者揃いの統一政府上層部は魔法を振りかざすだけで望むものを望むだけ得ることができる。 強者の天国。 弱者の地獄。 そんな現実に剣を突き立てる因子は未だ『中学校』のいじめっ子から逃げることに腐心していた。
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