第一章 麗しき少女よ、汝の正体は

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変態と紳士は紙一重である。 愛すべき対象の笑顔を守るためなら、変態は紳士となる。 「……怒ってない?」 「ぜんぜんっ。むしろ興奮してたくらいよ!」 「興奮?」 「あ、まず……ええと、ユーくん、その、そうだっ。アイスクリーム! 新しいのを買って───」 ユーの姿を改めて確認して。 紳士は変態となった。 ーーー☆ーーー 『ぷりちー☆スイートランド』。 もう頭の悪さが前面に押し出された店名がデデン!! と巨大な看板にピンク色のキャピキャピした装飾と共に目を入った。 東城大和は感想を表情に出さないことに死力を尽くす必要があった。どこぞの魔法少女(年増)を前にした時よりも強烈であった。 (これだから魔法以外が劣化した魔法使いは……) パソコンの使いすぎで漢字の読み書き能力が劣化するようなものなのだろう。もちろん本来の適性もあるだろうが、ここまで突き抜けるほどの精神性が構築されたのは間違いなく今の時代の影響があるだろう。 強すぎるがゆえに家主の暴走を止めるために行動できる人が周りにいなかった。そう考えれば納得がいくし、そう考えれば都合がいい。 (この際、こいつらの精神性なんてどうでもいい。ここに留まれば、姫川楓やその両親みてえな怪物どもの近くにいれば、東の魔女の配下が襲撃してきた時に巻き込める。生存確率が上がる! 小細工でも仕込んでおけばさらにだ。とにかく今は姫川楓を産んだお母さんたちとの接点を作れ。はは、姫川楓級の怪物を生み出したんだ。こりゃあとんでもねえ怪物が控えているだろうし、そーゆー魔法的強者は女同士で結婚するのが普通だ。専用の魔法を使えば、女同士でも子供を産めるんだからな。ははは! 一気に二人強大な手札が手に入るぞ!!) そして。 そして。 そして。 「楓、おかえり」 「ただいまーお父さん」 店内に入り、第一声がそれだった。 姫川楓は中年男性をお父さんと呼称したのだ。 (な、ん……っ!?) 姫川楓ほどの力を持つ男親など今の時代どれほど存在するのだろうか。奇跡的に怪物を生み出せたとしても、男親に対して友好的に接することなどあり得ない。先ほどの姫川楓のように誰かを助けるために魔法使いに立ち向かうなんて時代錯誤な善性でも秘めていれば別なのかもしれないが、普通は……。
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