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1
漆黒の閃光が目に突き刺さった。
その後、『彼女』は噴水がある公園へ飛ばされたのだ。
そう。
飛ばされたとしか表現できない。
あの閃光が炸裂した後にまったく異なる場所へ移動しているのだ。何らかの魔法が作用したとしか思えない。
魔法。《魔女》の力。
『彼女』を『彼女』たらしめる元凶ほどの存在ならば、瞬間移動なんて簡単に成し遂げることだろう。
(とにかくまずは情報収集です。ここがどこなのか、他のみんなも同じようにここに飛ばされたのか、それを確認しないと)
小柄な『彼女』はポンチョの内側に意識を向ける。不可思議な状況で、だからこそ『武器』に軽く触れることで心の支えとする。
「へえ。可愛い女の子でごぜーますね」
それは不意をつく声であった。
気配なんて微塵も感じられなかった。
真横、至近距離。一歩分の距離に。
十歳未満の女の子が立っていた。
少なくとも外見はそうであったが、その小さな身体から迸る『圧』は『彼女』の全身にかつてない恐怖を叩き込む。
(い、ぁ……!?)
なぜこれほどの驚異に今まで気づけなかったのか不思議なほどに強大な存在であった。『彼』と初めて出会った時も恐怖を感じたが、あれとは系統が異なる。
姿形なんて可愛らしいものだが。
内側から炸裂する『圧』は無数の怪物に囲まれたって味わえないほどに絶望に満ちている。
「……ッッッ!?」
それは防衛本能であった。
溺れ死にそうな人間が水の中でもがくように、とにかく『行動』を出力したに過ぎなかった。
心の支えとして『武器』に軽く触れた状態で『行動』が出力される。ほとんど武人の本能でポンチョの内側から引き抜いた銃の引き金を引く。
黒き弾丸が射出された。
幼い女の子の顔を直撃した。
「っ!? しま……っ!!」
「むう。いきなり攻撃仕掛けてくるなんて可愛くねーでごぜーますねー」
そのはずだった。直撃したはずなのに……ギュルギュルギュル、という異音が響く。女の子の柔らかな指が岩に穴をあけるほどの一撃を軽々と掴み取っていた。
ぱちん、と。
足掻くように回転していた弾丸が小蝿のように握り潰された。
「さ・て」
驚異が。
時代の象徴が。
絶対的な暴力が。
「不躾なモノには罰を与えなきゃでごぜーますね?」
『彼女』へと。
迫る。
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