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それを『中学時代の』東城大和『たち』は見ていた。
(な、ん……!? あいつ『東の魔女』じゃねえか! 統一政府のトップ絶対女王の頭脳の一人。ある意味においてナンバーツーの神将共さえも凌駕する権力の象徴。統一政府の中でもめちゃんこ強い魔法使いに送られる『魔女』という称号を手にした怪物たちの中でも最上位に位置するクソ野郎に……あのガキ何をいきなり銃なんてぶっ放している!?)
『女』らしく魔法的に強化していたのか、黒く光る弾丸であったが、当然のように『東の魔女』は掴み、潰した。絶対的な力の差を示した。
(くそが。くそがくそがくそが!! せっかくの夏休み、女王気取りどもから一時的にでも離れるために遠出しただけだってのに。ここは目的地への通り道でしかねえのに。何だってこんな場面に出くわさないといけねえんだ!?)
すぅ……と、怪物が小柄な『彼女』を指し示す。
絶対的な暴力が解放される。
女の癖に銃なんかに頼るほどには下層に位置する魔法使いが殺される。
それだけのことだ。
男にとって女なんて一律で憎悪の対象なのだ。
他者を虐げるしか能のない時代の象徴なのだ。
だから。
だから。
だけど。
その指の先から破壊的な力が溢れる。
バボッ!!!! と小柄な『彼女』を突き刺すように具現された数十メートルクラスの魔法爪が一つの命を奪い去る……寸前に。
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
『彼女』を突き飛ばし、絶対的な暴力から逃れ、地面に転がる影が一つ。
「へえ」
小首を傾げ、そして東の魔女は軽く指を振るう。
その先に数十メートルクラスの魔法爪を生やした状態で。
「や、れ……」
ゴボゴボゴボゴボッ!! という異音が響く。下方より振るわれた爪が地面と接触する。それだけで地面が『沸騰』したのだ。
熱波はない。
触れたもの『だけ』に超高温の現象を与える魔法らしい理不尽の極み。
東城大和の身体能力では避け続けることなどできない。彼と共にいた女の力で東の魔女に対抗することはできない。突き飛ばし一緒くたに地面を転がった『彼女』に期待はできない。
もしも。
真っ向勝負なんて馬鹿なことを挑もうとすれば。
「やれえええええええええ!!」
そして、一つの魔法が発動する。
風の支配。それだけのちっぽけな魔法が。
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