夏の匂い 恋の記憶

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お墓は、少し山を登ったところにある。 うだるような暑さに耐えながら坂道を上っていくと、昔よく登った木があった。 「まだあったんだ…」 幹がしっかりしていて、子供でも登りやすい木だった。 あんなに大きくて、高くて、ちょっと怖いと思っていたくらいなのに、今見てみると、背が低くて可愛らしいサイズだ。 こんな小さな木に登っただけで、まるで世界を手に入れたような気持ちになっていた。 子供というのは、なんて感受性が豊かなんだろう。何のことはない日常が、たちまち冒険へと変貌する。毎日が楽しくて、充実していて、そしてそれが私達の "普通" だった。 この木に登ると、遠くを見渡せる。そして、その景色を見る度、ワクワクした。 隣には、いつも一緒に遊んでいた三つ年上の男の子がいて、私は "お兄ちゃん" と呼んで懐いていた。彼も、瞳をキラキラさせて笑い、私にいろんなことを教えてくれた。 カブトムシやクワガタがよく見つかる場所。セミの捕まえ方。 そう言えば、木登りもお兄ちゃんから教わったんだった。 思い出を一つ見つけると、次から次へと連なるように、記憶が蘇ってくる。 そっと懐かしさに浸りながら、私は両親を追いかけた。
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