夏の匂い 恋の記憶

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無事お墓参りを終えて、私達は、向かいの家へ挨拶に向かう。母は、外から大きな声で旧友の名前を呼んだ。 「紗江ー!!」 すると、縁側からパタパタ足音がして、母と同じくらいの年の女性が顔を出した。 「真由美! 久しぶりやねぇ!」 顔をクシャクシャにして笑い、その女性は母に手を振る。母も嬉しそうに手を振り返し、二人は駆け寄って、その手を握り合った。 「もしかして、雪ちゃん?」 私を見て、おばさんが尋ねてくる。私はコクンと頷いて、笑みを向けた。 「はい、ご無沙汰しております」 「あらぁ~雪ちゃん、綺麗になって!!」 私は苦笑いして、首を横に振る。 今の自分が綺麗だとはとても思えないだけに、社交辞令とはいえ、何だか複雑だ。 「ねぇ、晴人君は?」 母の声に、ドキッとした。すると間髪入れずに、今度は父の声が聞こえた。 「おぉ、晴人君じゃないか!」 「うわ、お久しぶりです! …ビックリした」 父ではない声に、ピクリと反応する。 私の記憶にある声よりずっと低くて、思わず戸惑ってしまう。 しかし、よく考えれば当然のことだ。男性は声変わりするのだから。 私は少し緊張しながら、声のした方へ振り向いた。 「…雪?」 目を大きく見開いて、呆然としたように私の名を呟く。 彼が驚くのも無理はない。私だって、まさか会えると思っていなかった。
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