4 違和感

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この一泊旅行、正直言って不安の方が大きい。 でも決まってしまえば持ち前のお気楽さがむくむくと湧き上がり、せっかくだから気晴らししてこよう、くらいの前向きな気分になった。 俺が住んでるのは海なし県だから、西に行くにしても東にしても、けっこうな時間がかかる。 だから、夏休みの初日だというのに早朝起きだしてきた俺を見て、お袋が驚いた。 「何してんの?!」 「今から海。」 「直ちゃんと?」 「黒田っつーやつ。とそのツレ。」 そう言っただけなのに、お袋は訝しげな眼で俺を見た。 「直ちゃんとケンカでもしたの?」 内心「ははは」だ。 それだけ俺ら、しょっちゅうツルんでんだな。 そりゃそうか。夏休みの初っ端から直季以外のダチと遊ぶこと自体、珍しいんだし。 「してねぇけど、別にいいだろ。」 「帰りは?」 「明日。」 お袋は、驚き半分呆れ半分で「へぇ~。」と言った。 何それ。何か言外に感じるんすけど。 「・・・気をつけなさいよ。」 「はいはい。」 外に出てドアが閉まる寸前、「早く仲直りしなさいよ。」と聞こえたような気がした。 まだ結構朝早いのに、もう既にぬるい外気が気持悪い。 出がけに直季のことを思い出して、少しだけ後ろめたかった。 仲直り、か。 野郎だけで行くんだったら、もちろん俺は直季のこと誘ってた。 そうすればきっと、「ごめん」とか言ったり言わせたりしなくても、仲直りなんて簡単にできたのに。 でも今回は面子が面子だから、まさか誘うわけいかねぇしさ。 そこまでデリカシーなくねぇもん、俺。 って、自分にまで言い訳し始めて、タチ悪すぎだろ。最近の俺は言い訳がましくて、ホント嫌んなるね。
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