1 俺と、直季

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『ぼく、おおきくなったらナオちゃんとケッコンする。』 『啓ちゃん?啓ちゃんは直ちゃんとは結婚できないのよ。』 『どして?だってオトコは18さいになったらケッコンできるって、テレビがいってたよ。』 『うーんとね、啓ちゃんは18歳になっても直ちゃんとは結婚できないの。』 『えーっ?なんでだよぉ。』 『だってね、啓ちゃんと直ちゃんは・・・』 男の子同士だから。 *** 枕の横に置いた携帯のアラームより、少しだけ早く目が覚めた。 直後にけたたましい音が鳴り響いて、ビビった。 それで、今見ていた夢を全部忘れてしまった。 何だったかな・・・すげぇ懐かしかったことだけは憶えてるんだけど。 ま、どうせガキの頃の事でも夢で見てたんだろ。 思い出すのは潔く諦めて、俺はガリガリと後頭部を掻きながら立ち上がった。 相葉啓之介(アイバケイノスケ)、17歳。 あと一週間で18歳。 朝、いつも通りに通学の支度を整えて玄関のドアを開けると、合わせたかのようなタイミングで隣んちのドアも開いた。 「んじゃ、行ってくんね。」 家の中に声を掛けて出て来たのは、生まれた時からずっと俺の隣にいる男、佐賀直季(サガナオキ)。 「おす」 俺が声を掛けると 「おはよっ」 直季はそう言いながらたたっと駆けてきて、俺の左隣にすっと並んだ。 『生まれた時から隣』っていうのはそのまんま文字通りで、俺達が右と左に並んでいるのは新生児室にいる時からだ。 いわゆる「幼馴染み」っていうの? そういうやつ。
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