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この一泊旅行、正直言って不安の方が大きい。
でも決まってしまえば持ち前のお気楽さがむくむくと湧き上がり、せっかくだから気晴らししてこよう、くらいの前向きな気分になった。
俺が住んでるのは海なし県だから、西に行くにしても東にしても、けっこうな時間がかかる。
だから、夏休みの初日だというのに早朝起きだしてきた俺を見て、お袋が驚いた。
「何してんの?!」
「今から海。」
「直ちゃんと?」
「黒田っつーやつ。とそのツレ。」
そう言っただけなのに、お袋は訝しげな眼で俺を見た。
「直ちゃんとケンカでもしたの?」
内心「ははは」だ。
それだけ俺ら、しょっちゅうツルんでんだな。
そりゃそうか。夏休みの初っ端から直季以外のダチと遊ぶこと自体、珍しいんだし。
「してねぇけど、別にいいだろ。」
「帰りは?」
「明日。」
お袋は、驚き半分呆れ半分で「へぇ~。」と言った。
何それ。何か言外に感じるんすけど。
「・・・気をつけなさいよ。」
「はいはい。」
外に出てドアが閉まる寸前、「早く仲直りしなさいよ。」と聞こえたような気がした。
まだ結構朝早いのに、もう既にぬるい外気が気持悪い。
出がけに直季のことを思い出して、少しだけ後ろめたかった。
仲直り、か。
野郎だけで行くんだったら、もちろん俺は直季のこと誘ってた。
そうすればきっと、「ごめん」とか言ったり言わせたりしなくても、仲直りなんて簡単にできたのに。
でも今回は面子が面子だから、まさか誘うわけいかねぇしさ。
そこまでデリカシーなくねぇもん、俺。
って、自分にまで言い訳し始めて、タチ悪すぎだろ。最近の俺は言い訳がましくて、ホント嫌んなるね。
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