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俺達は多分、お互いの事をお互いの親よりもよく知っている。
何たって幼稚園から高校に至る今までクラスは違ってもずっと一緒だし、マンションの部屋まで隣同士なんだ。
俺なんて小さい頃、直季とガチで兄弟なんだと思ってたしな。
人生の半分以上は間違いなく直季と過ごして来ているし、そんなに一緒にいて飽きたりしねぇの?と聞かれることもある。
いやむしろ、あまりにも長い時間を共有しすぎて、俺の隣に直季がいるのは呼吸をする時空気を吸うのと同じくらい、俺の中では当たり前のことだった。
「啓之介、オマエ今日数学ある?」
「ん?ねぇよ。なんだよお前、課題やってくんの忘れたんだろ。」
「その通りっ!昼休み教えてくんね?6限だから。」
そう言われてチラッと左に目をやると、切羽詰まった表情で直季は俺を見ている。
そんなに拝まれなくても教えてやるつもりでいたけど、俺は仕方ないなという風に溜め息を吐いた。
「いいけどその代わり、今日帰りに飯奢れよ。」
「マジか!サンキュー!!」
『飯奢れ』が聞こえたのかどうか、直季は周辺にキラキラと星が飛び散りそうな笑顔で俺を見た。
直季の笑顔は、胸ん中がふわふわする。
だから俺は、子供の頃から直季の笑った顔を見るのが好きだ。
心の底から嬉しそうに楽しそうに笑うから俺もつられてにやけそうになるし、そもそも単純に可愛いし。
直季の奴は、性格は男そのものだし口も悪いけど、顔立ちとか中性的で、いやどっちかというと大きな瞳や長い睫毛なんかはそこらの女より女っぽい。
ガキの頃はその瞳の大きさが今よりもっと目立っていて、よく女の子に間違われていた。
実際俺も、物心つく前までは直季のこと女だと思ってたらしい。
リボンが先にくっついたピンみたいなのを髪につけてやっている写真や、俺が直季にキスをしている写真が残っているし、何かというと直季のことを抱き締めていたのは記憶にもある。
本人は気にしてるみたいだけど身体だって白くて華奢だし、ちょっと化粧して女装すりゃ、その辺の女よりずっと可愛いんじゃね?
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