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第2章 天使アニエル、来訪
ーー物心ついた時の記憶は、真っ暗な部屋。
寒くて、お腹が空いて……
それ以上に、一人が怖かった。
泣いても喚いても、状況は変わらない。
幼心にそれを理解して、ただじっと待っていた。
永遠のような長い時間を過ごしていると、やがて母が帰ってきた。
部屋に入ってきた母の顔色を真っ先に窺う。
点いた明かりに照らされた母の表情は、ここ最近で最悪だった。
『アンタのせいよ!!全部全部、アンタのせい!!』
『……ごめんなさい……ごめんなさい』
『アンタがいるから何もかも滅茶苦茶!!遊ぶことだってできやしない!』
『……ごめんなさい……おかーさん…痛いのはいや……ごめんなさい……ごめんなさい』
『うっとーしい!!黙れこのクソガキ!!』
何度も何度も叩かれる。
母の鬼のような形相と、振り上げられる手のひらだけが鮮明に思い出された。
……でも、嬉しかった。
だって母は、すぐにまた家を出ていってしまう。
今この時だけは、一人じゃない。
おかあさんと、一緒。
新しいコイビトができるまでは。
ーー母の幸せを願ってやれない僕は、愛されなくて当然だった。
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