第2章 天使アニエル、来訪

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「しかし、わしはそんな物より余程うまいもんを見つけたのだ!あれは凄い!人間にはほとほと感心してしまうのう……」 右手に粘着テープのローラーを持ちながら、惚けたように上空を見つめる悪魔。 その"うまいもの"を想像しているらしい。 猫耳と尻尾がパタパタと動き、今にもかぶりつきそうな様相をしている。 「それってなんだ?ネズミか?」 「だから違うと言っておるだろーが……。 それはのう……」 ご丁寧にツッコミを入れつつ、ラビはキラキラと瞳を輝かせながら颯人ににじり寄ってきた。 ……まさか、『人間の肉だ!』などと言われるのではないかと、やや颯人は警戒しながらラビを見返す。 本当に人間の肉だったらこの場で颯人の人生は終了だ。 某バスケット漫画の監督だって、諦めて試合終了せざるをえない。 そんな緊張に包まれながら、ラビは満面の笑顔でその単語を口にした。 「"あるふぉーと"だ!」 「……は?」 「うむ、だから"あるふぉーと"。 あれは美味い!人間のお菓子の歴史で革命的な存在だぞ!」 言われ、暫し呆然としてしまった。 ……あるふぉーと。 それもお菓子。 となると、颯人が思い描いたあれでいいのだろうかと、少し考えてしまう。 しかしお菓子のあるふぉーとは、颯人が知る限りあれしかない。 「……それって、ビスケットの上にチョコが乗っている四角いあれか?」 「うむ、そうだ!あるふぉーとはそれしかないであろう。しかもどこのコンビニやスーパーでも売っている優れものだぞ!」 「…………えらくピンポイントな好物だな」 「あのビスケットのサクサク感は計算されたものだぞ。あれ以上固くても、しっとりしていてもいかん!それにチョコとビスケットの黄金比!絶妙な食感!あれさえあれば、わしは何もいらぬ!」 まるで恋する乙女さながら。 こちらがドン引きするようなテンションで捲し立てたラビに、颯人は無表情のまま見入ってしまっていた。 ……こいつはブ○ボンの回し者だろうか。 そんなどうでもいいことが頭を過り、同時に薬局やスーパーで売っているファミリーパックのアルフ○ートの映像が浮かんでくる。 ……確かに美味しい。 美味しいのだが、ここまで熱く語る人物は初めて見た。 ……というか、人物ではなく悪魔だ。
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