3人が本棚に入れています
本棚に追加
「しかし、わしはそんな物より余程うまいもんを見つけたのだ!あれは凄い!人間にはほとほと感心してしまうのう……」
右手に粘着テープのローラーを持ちながら、惚けたように上空を見つめる悪魔。
その"うまいもの"を想像しているらしい。
猫耳と尻尾がパタパタと動き、今にもかぶりつきそうな様相をしている。
「それってなんだ?ネズミか?」
「だから違うと言っておるだろーが……。
それはのう……」
ご丁寧にツッコミを入れつつ、ラビはキラキラと瞳を輝かせながら颯人ににじり寄ってきた。
……まさか、『人間の肉だ!』などと言われるのではないかと、やや颯人は警戒しながらラビを見返す。
本当に人間の肉だったらこの場で颯人の人生は終了だ。
某バスケット漫画の監督だって、諦めて試合終了せざるをえない。
そんな緊張に包まれながら、ラビは満面の笑顔でその単語を口にした。
「"あるふぉーと"だ!」
「……は?」
「うむ、だから"あるふぉーと"。
あれは美味い!人間のお菓子の歴史で革命的な存在だぞ!」
言われ、暫し呆然としてしまった。
……あるふぉーと。
それもお菓子。
となると、颯人が思い描いたあれでいいのだろうかと、少し考えてしまう。
しかしお菓子のあるふぉーとは、颯人が知る限りあれしかない。
「……それって、ビスケットの上にチョコが乗っている四角いあれか?」
「うむ、そうだ!あるふぉーとはそれしかないであろう。しかもどこのコンビニやスーパーでも売っている優れものだぞ!」
「…………えらくピンポイントな好物だな」
「あのビスケットのサクサク感は計算されたものだぞ。あれ以上固くても、しっとりしていてもいかん!それにチョコとビスケットの黄金比!絶妙な食感!あれさえあれば、わしは何もいらぬ!」
まるで恋する乙女さながら。
こちらがドン引きするようなテンションで捲し立てたラビに、颯人は無表情のまま見入ってしまっていた。
……こいつはブ○ボンの回し者だろうか。
そんなどうでもいいことが頭を過り、同時に薬局やスーパーで売っているファミリーパックのアルフ○ートの映像が浮かんでくる。
……確かに美味しい。
美味しいのだが、ここまで熱く語る人物は初めて見た。
……というか、人物ではなく悪魔だ。
最初のコメントを投稿しよう!