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「……変人黒猫悪魔」
「変人でも黒猫でもない。なんだハヤト」
フヨフヨしていた尻尾がピタリと止まり、未だに粘着テープを持ったままのラビが不思議そうに聞き返す。
……そう、アルフ○ートの話などどうでもいいのだ。
そんなことよりも聞かねばならないことが、颯人には山ほどある。
「悪魔ってのはいったいーー」
言い掛けて、思わず口を閉ざした。
ラビの金色の瞳が突然細められ、颯人の右手ーーベランダへと注がれる。
黒い猫耳と尻尾の毛が逆立ち、何やら異様な雰囲気へと変質した目の前の悪魔を、颯人はただ黙って見ているしかなかった。
……どれくらいそうしていただろうか。
やがてラビはゆっくりと立ち上がり、ベランダの方へと歩いていく。
そして勢いよくカーテンを開け放つと、ベランダの柵には見知らぬ茶髪の男性が腰掛けていた。
「……な、んだ?こいつ……」
呆然とする颯人には構わず、屈強な体格の茶髪の男はニッコリと颯人に微笑みかける。
足首あたりまでの長い丈をした黒いローブを身に纏う見知らぬ男。
他人の家のベランダの柵に腰掛けている時点で怪しいことこのうえないのだが、この男の背中には、ラビと同じ黒いコウモリのような翼。
猫耳と尻尾は付いていないものの、一目で悪魔なのだと直感した。
「……人の家に勝手に侵入するとは感心せぬのう」
どの口が言うか、というツッコミを辛うじて颯人は飲み込み、ベランダの窓を開けたラビと見しらぬ悪魔を凝視する。
……ただでさえ勘弁願いたい悪魔などという存在が二匹。
できることなら夢であってほしいと願うも、冷たい夜風が容赦なく颯人の顔に吹き付ける。
「どーも。自分はラグエル天使教官の弟子にあたるライラっつーもんです。アンタらに御協力していただきたいことがあるんスよねー。
ジャジャン!」
ややチャラそうな言い方が気になったものの、その悪魔は懐から一枚の紙を取り出した。
ラビはそれを躊躇することなく受けとると、しげしげとその紙を眺め始める。
「ふむ、なになに……
『あなたの近くにいませんか?"はぐれ天使""はぐれ悪魔"の取り締まり強化月間実施中!!』
……なるほどのう。さすがは規律を重んじるラグエル教官。弟子を使ってご苦労なことだ」
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