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「本来悪魔や天使は上位の天使を目指したり、転生するために、天上界で修行を積むのが慣わしっス。
でも中には人間界に逃げ込んで、しれっと修行から逃れてのうのうと生活している奴がいるっスよ。
ラグエル天使教官はそいつらの取り締まりを強化するってことで、自分ら門下生達が駆り出されてるんスよね」
「はへー……これはまた大掛かりな……。
で、協力というのは、はぐれ天使やはぐれ悪魔を見つけたら連絡すればよいのだな?」
「そうっス!いやー、話が早いっスね!連絡先はそのチラシに書いてあるんで、宜しく頼むっスよ」
「うむ、では任務ご苦労ー」
笑顔で手を振るラビに手を振り返して応え、ライラという悪魔は羽根を羽ばたかせて浮遊する。
そして黒いローブをはためかせながら、悪魔は夜の闇へと消えていってしまった。
一部始終を黙って見ていた颯人は、聞きたくないながらも、仕方なくラビへと聞いてみる。
「……今の、悪魔だよな」
「うむ。あやつは"見習い悪魔"ではなく"悪魔"だのう」
「……いや、そーゆーのじゃなくてよ。なんつーか……また来たりしないよな?これ以上変な奴らとは関わりたくねぇ」
顔をひきつらせる颯人の心情を知ってか知らずか。
チラシを眺めながら、ラビは無情にも言い放つ。
「それは無理かもしれんのう」
「……無理?」
「うむ、なぜなら……」
言い掛けた直後、拳ほどの大きさの火の球がラビの足下目掛けて勢いよく飛んできた。
辺りに一瞬焦げ臭い臭いが立ち込めたものの、それはベランダのコンクリートの床に霧散してたちまちかき消えていく。
そして飛んできた方向を見やれば、そこには先程の……
「って、コラー!!あんた"はぐれ悪魔"っしょ!?しかも"万年見習い悪魔"の出来損ないのラビ!!
ラグエル天使教官から噂は聞いてるっスよ!!」
「ちっ……バレたか」
「バレるに決まってるっしょ!!」
どこかに行ってしまったと思われた悪魔のライラ。
上空で羽ばたきながら、何やら地上のラビへと突っ掛かっていた。
……しかしもとはと言えば、このライラから仕掛けてきたノリツッコミな気もするが、そこはあえて何も言わないでおく。
とにかく、これ以上ないほどヤバイ状況らしいことは、順風満帆な人生を目指している颯人にとって、場の雰囲気から伝わってきてしまっている。
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