第2章 天使アニエル、来訪

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見下しながらの冷たい目で言われ、思わず背筋を伸ばしてしまう。 そんな颯人の横では、いじけたラビがピカチ○ウの劣化版のようなものを書き始めていた。 「まず、この世界には人間界と天上界という二つの世界が存在する。 人間界とは、君たち人間が住むこの世界のことだ。 そして天上界とは、人間界の遥か上空に存在する世界で、悪魔や天使達が暮らしている。 天上界の者の行き着くところは、上位の天使を目指すか、転生するかの二択となる。 転生とは、人間に生まれ変わり、新たな生を受けることを言う。 しかし誰もが転生できるわけではなく、位が"天使"以上でなければ転生はできない。ここまではいいな?」 「……お、う」 「天上界に入った者は、皆一番下の位、"見習い悪魔"からスタートする。 天上界での位は下から順番に "見習い悪魔" "悪魔" "天使" "天使教官" "天使長" "大天使" となっている。 一般的に天上界に入った"見習い悪魔"は、"天使教官"に弟子入りし、修行を積んで昇格試験を受けることになる。 その昇格試験に合格すれば、位を1つ上げることができる」 颯人の脳裏に、先程のライラという悪魔が言っていた言葉が過る。 ……"はぐれ悪魔"と"はぐれ天使"。 転生を目指すわけでもなく、上位の天使を目指すわけでもない存在。 つまり、天上界では異端の存在。 まさにその異端児が、颯人の横で奇怪な絵を描き続けている。 「天上界は"神"様が秩序を保っている。"神"の声を直接聞けるのは"大天使"のみだ。その"大天使"が各天使にお告げを伝え、天上界は機能している。 当然、"神"に逆らえば"堕天使"として捕らえられ、処刑されることになる。 天上界での死は、転生は愚か、未来永劫闇をさ迷い続けることになる永遠の死を意味する」 満足げにチラシのイラストを眺めるラビを見て、それとなく視線をやれば、奇怪で不気味な禍々しい物体が多数描かれていた。 毛虫を潰して足を八本生やしたような生き物には、『人間』などと書かれている。 ……思わず二度見してしまったのは、どうやら颯人だけではないらしい。 金髪の天使のアニエルも、驚愕の眼差しでーーというより、むしろ畏怖の眼差しでそのイラストを凝視している。 「……アニエル、さんは」 「アニエルでいい」 「アニエル……は、"天使"なのか?」 「僕の位は"天使"だ」 「……でもラビは……」
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