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颯人がそう言うと、ラビの顔がパッと輝き、嬉しそうに尻尾を振り始めた。
おまけに羽根までパタパタとさせ、ジっと見つめてくるラビに何か変なことを言ったのかと訝った颯人だったが、ラビは嬉々として颯人に詰めよってくる。
「うむ、うむ!そーなのだ!わしはラビなのだ!」
「……は?」
「名前、ようやく呼んでくれたのう。さっきのと合わせて二回目だ」
金色の瞳をキラキラとさせながら、そう言って微笑むラビ。
一瞬わけがわからなかったが、そういえば名前を呼んだのは二回目だった。
たったそれだけのことで喜ぶラビに呆気にとられていると、突然目の前のラビの身体がフワリと浮かび上がる。
飛んだ……わけではなかった。
ラビの背後にはアニエルの姿。
アニエルがラビの両脇を掴み、その身体を抱え上げると、颯人から離れた位置へとラビを下ろした。
「……人間に近付きすぎです。ラビ様」
「べつによいではないか。ハヤトは優しいのだ」
「…………そういう問題ではありません」
アニエルから向けられた視線に、思わず颯人の背筋が凍りつく。
……警戒、という意味よりかは、本来それはあり得ない意味を含んだ視線に近い。
……まさに"ぶっとび天使"。
などと思ったことは、絶対に口には出さないでおく。
「……先程の質問の答だけど、ラビ様は"見習い悪魔"だ」
「うむ、無駄に歴の長い"見習い悪魔"なのだ!」
「威張って言うことではありませんよ」
「うむむ……」
釘を刺され、猫耳がヘニャリと垂れ下がり、頬を膨らませる"万年見習い悪魔"。
……そう、ならば余計におかしいことが1つ。
ラビよりも、アニエルの方が位が高い。
にも関わらず、何故かアニエルはラビに敬語を使っていた。
それも天上界随一の美貌と実力を持つらしい天使が、だ。
その疑問を敏感に感じとったのか、アニエルはラビに視線をやったまま、答えてくれた。
「天上界の"天使教官"なんて、つまらない連中ばかりなんだよ。ハッキリ言って僕も嫌気が差していた。
当事"見習い悪魔"だった僕は、面白半分で人間界に遊びに来たんだ。
そこで……ラビ様に会った」
「こやつが突然、『弟子入りしたい』だの何だの言ってきおって大変だったのだ!そもそもわしも"見習い悪魔"だとゆーのに、勝手に決めつけるしのう……」
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