第1章 人間界~逢澤颯人~

4/10
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
……『波乱万丈』。 再び頭を過る四字熟語。 しばらく互いに見つめあって。 「…………。」 颯人は無言のまま、窓を閉めてカーテンで締め切った。 ……そう、オレは何も見ていない。 レポートで疲れきった頭が見せている白昼夢というやつだ、なんて言い聞かせながらテーブルに戻り掛けるも、危険因子は黙ってはくれなかった。 「って、コラー!!シカトかいぃ!?明らかに不審者丸出しであろーが!!もっと追求するなり驚くなりせんか馬鹿者ー!」 「あー……あんまり騒ぐと向かいの家のオバチャン、物投げてくんから。さっさと帰ってくんねーかな」 「あ、悪魔かおぬしは!?人がせっかく驚かしに来たとゆーのに!!そんな一言で済ませる気か!?」 なにやら子供の高い声がギャーギャー喚き、仕切りに窓を叩いてきている。 見た目は12歳くらいの子供だった。 しかし何やら喋り方が年寄り臭い。 変人決定。 よって関わりたくはない。 が、このままでは向かいのオバチャンの逆鱗に触れるのは確実である。 重い溜め息を吐きながらカーテンを開け、窓を開けると、先程の子供がホッとした様子で颯人を見てきた。 しかし颯人が何度見ても、この子供は危険因子の塊にすぎない。 そして子供はあろうことか、更に血迷ったことを話し始めた。 「うむうむ、よーやく話を聞く気になったか。 わしは天上界の住人、見習い悪魔のラビという。 悪魔なのだぞ、悪魔!」 「…………。」 「おぬしよりも数百倍長生きしておるのだ。 よって子供扱いするでないぞ!」 腕を組み、頬を膨らませながら見上げてくる自称、悪魔。 厨二病決定。 よって関わりたくはない。 心のレンガを遥か高く積み上げながら、颯人はとりあえず忠告しておくことにした。 「……おいガキ」 「ガキではない!そう言ったばかりではないか!」 「…………その耳と尻尾と羽根 ドンキで買っただろ。似たようなの、売ってたぜ」 途端にピタリと止まった子供の動き。 俯き、肩を震わせ始めた子供に、虐めすぎたかと思った颯人だったが、いずれはバレて他の大人たちに馬鹿にされるのがオチだ。 それならば、ここで嘘を暴いてやるのも優しさというやつに違いない。 そう納得していた颯人に、しかし子供はギラリと金色の瞳で見上げ、睨み付けてきた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!