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……『波乱万丈』。
再び頭を過る四字熟語。
しばらく互いに見つめあって。
「…………。」
颯人は無言のまま、窓を閉めてカーテンで締め切った。
……そう、オレは何も見ていない。
レポートで疲れきった頭が見せている白昼夢というやつだ、なんて言い聞かせながらテーブルに戻り掛けるも、危険因子は黙ってはくれなかった。
「って、コラー!!シカトかいぃ!?明らかに不審者丸出しであろーが!!もっと追求するなり驚くなりせんか馬鹿者ー!」
「あー……あんまり騒ぐと向かいの家のオバチャン、物投げてくんから。さっさと帰ってくんねーかな」
「あ、悪魔かおぬしは!?人がせっかく驚かしに来たとゆーのに!!そんな一言で済ませる気か!?」
なにやら子供の高い声がギャーギャー喚き、仕切りに窓を叩いてきている。
見た目は12歳くらいの子供だった。
しかし何やら喋り方が年寄り臭い。
変人決定。
よって関わりたくはない。
が、このままでは向かいのオバチャンの逆鱗に触れるのは確実である。
重い溜め息を吐きながらカーテンを開け、窓を開けると、先程の子供がホッとした様子で颯人を見てきた。
しかし颯人が何度見ても、この子供は危険因子の塊にすぎない。
そして子供はあろうことか、更に血迷ったことを話し始めた。
「うむうむ、よーやく話を聞く気になったか。
わしは天上界の住人、見習い悪魔のラビという。
悪魔なのだぞ、悪魔!」
「…………。」
「おぬしよりも数百倍長生きしておるのだ。
よって子供扱いするでないぞ!」
腕を組み、頬を膨らませながら見上げてくる自称、悪魔。
厨二病決定。
よって関わりたくはない。
心のレンガを遥か高く積み上げながら、颯人はとりあえず忠告しておくことにした。
「……おいガキ」
「ガキではない!そう言ったばかりではないか!」
「…………その耳と尻尾と羽根
ドンキで買っただろ。似たようなの、売ってたぜ」
途端にピタリと止まった子供の動き。
俯き、肩を震わせ始めた子供に、虐めすぎたかと思った颯人だったが、いずれはバレて他の大人たちに馬鹿にされるのがオチだ。
それならば、ここで嘘を暴いてやるのも優しさというやつに違いない。
そう納得していた颯人に、しかし子供はギラリと金色の瞳で見上げ、睨み付けてきた。
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