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……耳や羽根を触った時とは違う反応。
どうやら尻尾は弱点らしい。
試しに尻尾の先端を指でなで回してみると、途端に力が抜け、フニャリとソファーに突っ伏してしまった。
それも、
「ッ…ん、ぁッ!」
何やら如何わしい声色つきで。
慌てて尻尾から手を離すと、大きな黒い猫耳がヘニャリと垂れる。
……今の反応は、もしかするともしかするのだろうか。
などと暫し茫然と見入っていた颯人に、やがて金色の瞳がキッと恨めしそうに向けられた。
「お、おぬし……」
「……な、んだよ」
「初対面でいきなり……どこを触っておるのだ!?この変態!!」
「はぁ!?勝手に変態呼ばわりすんなテメェ!たかだか尻尾触ったくれーでーー」
「り、立派な変態ではないか!!普通人の尻尾を勝手に触るやつがあるか!?」
「……まず普通人に尻尾は生えてねぇ」
「うむ。そうであった。これは一本取られーーって、違ーう!!違うのだ!!許可なく悪魔の尻尾を触ってはいかんと親に教えてもらわんかったのか!?おぬしは!」
「教えてもらってるわけねーだろ!」
尻尾を背後に隠しながら、ギャーギャー騒ぐ自称悪魔。
ピンと張った両耳の毛は逆立ち、どうやらご立腹らしいことが窺える。
……しかし、あの反応からして。
どうやら悪魔の尻尾とやらは、猫の物とは異なる感覚を担っているらしい。
知らなかったとはいえ、勝手に触った颯人にも非があるのは間違いない。
「……まぁ、その……わりぃ。触って悪かったよ」
おとなしくそう謝れば、ソファーの上で毛を逆立てていた自称悪魔は、途端に静かになった。
そして図々しくも颯人の顔をまじまじとのぞきこんでくる。
「……ふ~む」
「……んだよ」
観察してくるような大きな金色の瞳。
床に座り込んだままの颯人を、自称悪魔もソファーから飛び降り、容赦なく視線を浴びせてくる。
まるで穴が空きそうなほど至近距離で見詰められ、その視線に耐え兼ねていると、金色の双眼はふいと距離をとった。
意図が掴めずにいる颯人の前で、小柄な悪魔は実に愉快そうに告げる。
「おぬし、意外に素直に謝るのだな。
怖そうなナリをしているが、なかなか好青年ではないか」
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