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さも可笑しそうに微笑む黒髪の悪魔。
思わず見とれてしまうような、華やいだその微笑みに、暫し我を忘れかけーー
颯人は無理矢理視線を外した。
この容姿に騙されるわけにはいかない。
この悪魔は変人で、波乱万丈を巻き起こす危険因子なのだ。
「……ふーむ、ハヤトはなかなか勉強家なのだな」
「っ!?てめっ、勝手に見てんじゃねぇ!」
「"てめー"ではない。わしはラビという名があるのだ」
パソコンの画面を覗きこみ、勝手に画面をスクロールさせ始める子供悪魔。
何故名前を知られているのかと訝しんだものの、パソコンの画面には颯人の名前が表示されている。
しかし苦労して完成させたレポートを水の泡にされては堪らないと、颯人は慌ててノートパソコンを取り上げた。
すると何が不満なのか、悪魔は膨れっ面をして颯人を睨み付ける。
「てめーが悪魔なのはわかった」
「"てめー"ではない。ラビという。それにわしは見習い悪魔だ」
「それもわかったし充分驚いた。
だからさっさと帰ってくれ。見ての通りオレは忙しいし、変なことに巻き込まれたくはねぇ」
「変なこととは人聞きが悪いのう。わしはおぬしに世話になると決めたのだ。だからこうして訪ねてきたのであろうが」
「勝手に決めんな!つーかどういう経緯でオレになったんだ!?」
「壁に地図を貼り付けて……」
「…………。」
「ダーツを投げたら、ちょうどここのマンションになったのだ」
「……所ジョ○ジかおめーは」
「わしはラビだ。所でも"おめー"でもない」
「つーかさっさと帰れ!同じマンションなら隣の部屋に行け!オレの部屋じゃなくてもいーだろ!」
「お隣りさんは女性ではないか!いきなり見知らぬ男の悪魔が現れたら可哀想であろう」
「この状況からしてオレも充分可哀想だろーが!!」
なんとかして帰っていただきたいのだが、頑固な悪魔は頑なに動こうとしなかった。
しかもどうやら男だったらしい。
百歩譲って世話をするとして、せめて女の子が良かったと考えてしまうのは男の性というやつなのだろう。
「まぁ聞け、ハヤト。おぬしにとっても悪い話ではない」
「あ?」
「もちろんタダで面倒を見ろとは言わん。わしはおぬしの望みを叶えることだってできるのだぞ?」
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