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突然バサリと黒い羽根を広げ、浮遊すると不適に微笑む悪魔。
……望みを叶える。
魔法のランプじゃあるまいし、と思いつつも、興味を惹かれてしまう。
ただの変人悪魔かと思ったのだが、それなりに悪魔らしいことは出来るらしい。
「……例えば?」
「そうだのう……例えば、おぬしがレポートの課題に追われていて、どうにかしてほしいと言えば……」
「……言えば?」
フッと金色の目を細め、笑む悪魔に緊張が走る。
……初めて見た悪魔らしい顔。
その幼い顔立ちからは想像できないような、どこか禍々しい空気。
そういえば、昔興味本意で読んだ書物に出てきた悪魔は、代償さえ払えば願いを叶えてやると言っていた気がする。
その代償は、悪魔の面倒をみるなどという生易しいものではない。
それにプラスで別のものを要求されるのは目に見えていた。
……レポートくらいの願いであれば、『おぬしの小指の爪を一枚寄越せ』などと言われるのだろうか。
命ではないだけマシだが、それも勘弁していただきたい。
颯人が固唾を飲んで見守る中、悪魔はゆっくりと口を開く。
「……わしが代わりに書いてやる。ちょっとばかし時間はかかるが」
「……は?代償は?」
「代償?何を言っておるのだおぬしは。世話になるのだから必要なかろう。そもそも願いを叶えるのに代償だとか何だとか、そんな質面倒なことはやっておれん」
「…………つーか魔法でレポートが書けるもんなのか?」
「んなアホな。パソコンで打ち込むに決まっているであろう」
「…………。」
……返ってきた答は、なんとも古典的なものだった。
これでは人間とさして変わらない。
万能な魔法のようなものを使えると思っていただけに、知らず颯人の口から溜め息が漏れてしまった。
それに対して目の前の小柄な悪魔は猫耳をピクリとさせ、颯人の回りをバサバサと飛び回る。
「その溜め息はなんなのだ?もしやガッカリさせてしまったかのう?」
「……悪魔っつーのは万能じゃねぇんだな。なんでも叶えてやるとか言ったわりに」
「できる限りの努力はするが、限度はあるのだ。叶えてやれるのは、人間ができる範囲のことだからのう」
「じゃー、さっさとオレの前から消えてくれ、不審者」
「不審者ではない!ラビだ!」
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