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「あ、あの暉さん?」
「・・・・・」
「どこに行くんですか?」
不安げな匡の声に振り向きもせず、ただ前に進む。
この神社の奥まで行くと小さな祠があるのは、何度か実家に来た時に、一人で歩き回っていた時に偶然見つけた。
ただそこまでいくと木々が生い茂って、上を見上げても空は見えないのは知っている。
「暉さん・・・」
悲しそうな匡の声に、胸が痛くなって立ち止まった。
俺は、何をやってるんだ。
"ドンドン"
上を見上げると夜空は見えるけど、花火は見えない。
音だけが聞こえてくる。
そして、人々のざわめきが風に乗って届く。
でも、ここには、俺と匡の2人しかいない。
もう、我慢の限界だった。
「・・・暉さっ・・・!?」
匡を大きな木に押し付けた。
見下ろした匡の顔は、怯えた瞳をしていながらも、頬は少し赤くなっている。
やっぱり、お前は俺を煽る天才かもしれない。
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