side 暉(ヒカル)

11/12
338人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「あ、あの暉さん?」 「・・・・・」 「どこに行くんですか?」 不安げな匡の声に振り向きもせず、ただ前に進む。 この神社の奥まで行くと小さな祠があるのは、何度か実家に来た時に、一人で歩き回っていた時に偶然見つけた。 ただそこまでいくと木々が生い茂って、上を見上げても空は見えないのは知っている。 「暉さん・・・」 悲しそうな匡の声に、胸が痛くなって立ち止まった。 俺は、何をやってるんだ。 "ドンドン" 上を見上げると夜空は見えるけど、花火は見えない。 音だけが聞こえてくる。 そして、人々のざわめきが風に乗って届く。 でも、ここには、俺と匡の2人しかいない。 もう、我慢の限界だった。 「・・・暉さっ・・・!?」 匡を大きな木に押し付けた。 見下ろした匡の顔は、怯えた瞳をしていながらも、頬は少し赤くなっている。 やっぱり、お前は俺を煽る天才かもしれない。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!