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浴衣を着た匡は、少し照れ臭そうにしながら、年下の従弟たちにニコニコ微笑んでいる。
その微笑みが自分に向けられないだろうか、と期待して見ていても、俺のほうに向かうことはなかった。
軽くため息をつきながら、伯父たちが家を出るのとともに後をついていく。
従弟たちに纏わりつかれながら、伯父たちの話に頷く。
俺も大人になったもののだ。
人知れず苦笑いしながら、人の流れにのって歩く。
ふと気になって、匡の姿を探すけれど、俺たちの集団から離れてしまったのか、すぐに見つけられない。
「何やってんだか」
匡が先にいるわけがない、と思って振り返った時、後ろにいた匡と目が合った。
その途端、立ち止まり、後ろから来た男とぶつかっている匡。
そして慌てたように、人の流れから逃げ出した。
・・・いや、俺の視線から逃げ出したんだ。
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