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「匡・・・俺のこと、いつも見てただろ・・・」
大きく目を見開く匡。
黒く輝く大きな瞳に映るのは、余裕のない俺の顔。
「な、何をっ・・・!?」
「誤魔化しても無駄だよ。」
匡の耳元で囁くと、匡の身体が微かに動いた。
首まで真っ赤になっている。
そのまま首筋に唇を這わせたい。
「・・・・・」
そんな切なそうな顔で見上げないでくれ。
「ずっと、我慢してたのに。お前が悪いんだ・・・そんな目で見つめられたら・・・」
やっぱり、匡は、無自覚な小悪魔だ。
「もう・・・逃がしてあげられそうもないよ。」
匡の逃げ道はない。
拒否られる可能性は考えてなんかいなかった。
「・・・逃げないよ。」
匡の掠れた声に、ゾクリと背中を這い上がる。
そうだ。
むしろ、俺の方が、お前に囚われたんだ。
優しく重ねた匡の唇は、とても甘くて、俺の箍(タガ)はあっけなく外れた。
強く抱きしめた匡が、俺の背中に縋りついてくる。
ああ。
やっぱり。
・・・お前のことは、逃がしてあげられない。
-Fin-
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