蜘蛛がいる

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蜘蛛がいる

 友人の家に遊びに行ったら、部屋にでっかい蜘蛛がいた。  蜘蛛も含めて昆虫類が苦手な俺は、いますぐ殺虫剤をくれと要求したが、友人はこともなげに、コイツはいていいんだと言った。  なんでも、蜘蛛が居つくようになってから、部屋に蚊や蠅、その他の虫が現れなくなったらしい。  昔からやたらと蚊に刺される体質だから、むしろ助かってると友人は言ったが、俺は生理的にこのテのフォルムの生き物がダメなので、早々に友人宅を退散し、以降、決してそいつの家を訪れることはなかった。  それでもそいつとの友情は続いているが、最近、その友人が目に見えて痩せ始めたのだ。  ダイエットをするような体型ではなかったから、もしや何かの病気なのではと思い、具合を聞いてみたところ、どこも悪くはないという。  それでも、原因がないのに痩せていくのが気になって、医者に行けとしつこく訴えたら、さすがに本人も思うところがあったのだろう。渋々といった様子ではあるが医者に罹ることを承諾した。  だが、医者に行っても、痩せていく原因はまったく判らなかった。  その果てに大病院を紹介され、様々な精密検査を受けもしたが、友人は痩せ細る一方で、ある日、ついに倒れて入院することになった。  様子窺いに見舞いに行くと、よく来てくれたと友人は笑ったが、ガリガリの顔に生気はまるでなく、嫌な予感通り、その数日後に友人はなくなった。  通夜と葬儀が行われ、四十九日もすんだ後、親しい友人に形見分けをしたいとご両親に呼ばれ、友人の家を訪ねた。
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