カルテ1ー2

14/19

1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「待て、マテマテ、待てーぃ 待たんかい、こらー」 モンスターを足の付け根に挟んできやがった陣内の頭にチョップを落とした時 胸ポケットの中の院内使用の携帯が鳴り響いた。 助かった! 「ほら呼び出し!おしまい、おしまいよ! あ、っ、っちょっ!」 スリ、と進んできた陣内のモンスター。 これ、股の間で行われる交接じゃないっすか!? 次に陣内の携帯が鳴り出し、狭い個室の中は二つの音が輪唱する。 「ほら、陣内!優先順位、考えてっ、バカ者!」 こんな事で息を切らすのはどうかと思ったが何故だか肩が上がり、心臓が異様な速さを刻んでいた。 「戻るよ」 ゴクン、と口の中の唾液を飲み込み陣内を睨み付ける。 自分のモノにスイと手を当て引き抜いてから にやり、と笑う仕種は、知らない陣内みたいだ。 普段メスを持つ手を私の前に翳し、親指と人差し指をくっ付けたそこを徐々に離していく。 私の携帯の音が先に止んだ。 ハッキリと糸を引く指の間に、イヤな予感。 言いたい事は分かったから お願いだから、言わないで。 「まだ、何もしてませんよ?有馬さん」 妖しげな微笑みは、麗しい程に色付いていて それを見て揺れる私を楽しむかのように追撃する。 「ほら、幸せホルモン、出したくなったでしょ? 手伝いますよ」 「…………!」 なんて、緩い響きで話すんだちくしょう! そんな小綺麗な顔色で、オバサンを誘惑するんじゃないっ。 悔しい。 悔しいっ! 「何してるんですか、パンツ上げてください、行きますよ?」 「へ?」 もう、自分だけ何もかもの用意を整えて 目の前で鳴り響く携帯に出る。 「はい、陣内です」 このやろぉー!! メランメランと湧いてくるこの苛立ち。 ムカつきまくる事この上ない! ガチャ、と個室を開けたのと同時に ズボンとパンツを引き上げた。 まるで私の事なんか居ないかのような扱い。 おのれ、陳内!! クソ陳内めぇっ!
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1217人が本棚に入れています
本棚に追加