カルテ1ー2

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真夜中過ぎ。 陣内と私は車でウチに向かう羽目になった。 意外だったのは、陣内の車がエルグ○ンドだったのだ。 なんだ ファミリーカーかよ。 既婚者なんだ、と思ったのは陣内のひと言。 「あんた、こんな落ち着いたの乗ってんの?」 に対しての返事が 「オレ、とっくに落ち着いてますから」 ああ、そーなんだ。 と、思った。 真っ暗で寒空の中、何となくやる気の抜けた私は 断ろうと意気込んでいた気力も失せそのまま自宅へ運ばれる。 なんだなんだ。 何か期待してたのかよ。 別に32で既婚なんて普通じゃん。 いやいやないない。 相手は年下だしさ。 めんどくさ。 ……ってゆーか、私が一番めんどくさい。 に、してもさ。 毎日毎日休みもなくて、帰れるかどうかの保証もなくて家族は何にも言わないの? あ、どうでもいい事だけど。 そうこう考えてる間に、マンションの前に到着した私達は、車を降りる。 「有馬さん」 「なによ」 「こんな綺麗なとこに住んでるんですか」 「私、低層じゃないと嫌なのよね」 「高いところはダメなんですか」 「駄目じゃないけど、嫌なの」 こんなとこで押し問答してる暇はない。 早く陣内を解放してやらなきゃ。 「ほら、こっち」 私はさっきとはうって変わってパキパキと動き出した。
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