カルテ1ー2

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「あのねぇ、そんなにセックスに飢えてる女に見える?」 陣内の手を退けようと腕を振り払う。 「いくらなんでも失礼でしょ、あんた」 引っ張っても捩っても離してはくれないその腕を払う事を諦めた。。 はぁ、とでっかい息を吐いて反対側の腕で"ドン!"と胸を押し退けてみる。 相手は見るからに私より屈強男で、ちっとも敵いそうにない。 「ちょっと、痛いんですけど!」 睨んで見上げた所でまたうまい具合にプツリとライトが切れた。 これじゃ睨みの威力は3分の1じゃない。 だけど。 こっちが、ヤられる事になる。 暗闇と暁が一瞬だけフッと混在した間の陣内は 面白そうに微笑んでいて それがまた、なんとも綺麗で…… 何時もの軌道をズレていた心拍が一層おかしな方向へ舵をとる。 無意識にゴクリと唾液を飲み込んでいた。 次のライトが灯る頃には私から数十センチは遠ざかっていた陣内は来た時と変わらないくらい真面目腐った顔で 「また明日。 お休みなさい、有馬さん」 そう残して部屋から出ていく。 ドアが閉まりきった途端にヘナヘナと波線を描くようにペッタンと玄関にしゃがみこむ。 「な、なんなの、マジでアイツ……」 バイクのエンジンを暖気させるようにドッドッと刻む心臓の音が、頭と目とお腹の中で響いていた。 「血圧、上がったじゃない……どうしてくれんのよ」 なに? セックスって。 オレでよければします、って何よ、 おねーさんをからかうのもいい加減にしとけっつーの! これだから男はバカばっかりだと思わざるをえない。 永遠の愛を誓った番(ツガイ)と仲良くしてればいーじゃん。 「あー!スッキリしないっ!!」 ……私がダメなのか。 私がなんとなく恋愛体質ではないからかな。 今に始まった訳じゃないや。 立ち上がりやっぱり向かった先は浴室。 こういうときはひとっ風呂浴びるに限る。 ブツブツと呟きながら まだ溜まりきっていないお湯の中に身体を沈めて 1日の反省会をした。
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