1217人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
どんなに夜遅くに帰っても、朝は7時までにはまた病院へ入る。
これもボスとの契約のひとつだから文句は言えない。
「おはようございます、有馬先生」
「おはよー」
小さな欠伸を噛みながら、パリッとしたスクラブの心地よさを肌で感じる朝は、いつもとなにも変わらない。
首から提げたIDを左ポケットで留めて
病床を回る。
気になっているのはやっぱり昨日の開放骨折の千葉くん。
血液検査では炎症があるものの、それほど高い数値ではないことに安心した。
外に飛び出た骨が、感染する確率は物凄く高くて
しかも、一度感染するとドえらいことになるからだ。
「ほんと、君はラッキーだったよ?」
眠る、青年の頭を撫でながらチェックをして
次へ移る。
ラウンドを終えて医局へ戻ると、ソファで陣内が眠っていた。
側のテーブルにはグレープフルーツの残骸が2個。
そんなに好きなのか。
好きだって言ってたもんね。
寝顔は無垢なもんだ。
どの口があんな人をバカにするような事を言ったんだ、と疑いたくなるくらいの安らかな寝顔だった。
ムカつくヤツだけど、起こすことはしない。
ここに勤務してる医師のほとんどは本当に休みがないからだ。
中でも陣内と私は見るも無惨なくらいだ。
救急車が来なくても、患者が駆け込んでこなくても仕事はたくさんある。
パソコンでオーダーを書き込んでいたら机の上にビニールが置かれた気配。
ガサリ、と袋が擦れる音が耳障りだ。
最初のコメントを投稿しよう!