カルテ1ー2

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「陣内、あんたやっぱり整復上手いわ」 「そうですか?有り難うございます」 同じ医師として、資質があからさまに違う事を見せつけられると湧いてくるのが妬心。 ああ、コイツには敵わない、と思ったのは 昨日と今日と2度目だ。 なんかやっぱりムカつく。 何度か口をついて出そうになった。 "あんた、どこでヤってきたの" でも、これを聞いてしまうと 私が陣内を気にしてるみたいで嫌なんだ。 そう、ちっちゃな見栄。 どうでもいいような、見栄だけど。 見栄と一緒にくっついてるのがこれまた どうでもいいような、プライドだ。 厄介な職業だわ 厄介な人間だわ 結紮とか縫合とかって 慣れと場数と練習である程度のところまでは補えたりするんだけどね? この、骨接ぎ。 これってさぁ、感覚、の問題なんだよね? 肘関節、これ、入れるのも上手い人がすると 全く痛くないし、それ迄の痛みだってあっという間に無くなっちゃうし。 「まだまだ有馬さんには及びませんけど」 「は?」 マスクを取って睨む。 こいつ、どの面提げてそんな事を言うんだ。 やっぱり至極クソ真面目な顔だった。 それが、ふ、と緩んで 「あー、有馬さんその顔よくないですよ」 「は?」 「それじゃ男はイケないです」 頭をカチ割ってやろうかと思った。
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