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ブレイドさんが手渡してくれた袋の中身は
ハウスキーパーさんが用意してくれたサンドイッチだった。
それと、プロテイン入りのゼリー飲料に愛用している硬水。
「いってらっしゃいませ」
「わざわざありがとうございます」
深々と下げられた頭に合わせて
深々と頭を下げ返す。
「また、お帰りになる際はお迎えに上がります」
いつもそう言って私を見送り
病院へ入って行くのを見届けるブレイドさんは
そこで電話をする。
まあ、多分白石にだと思うけど。
欠伸を一つ、したところだった。
「お前、お嬢さんなのか」
嫌な声だ。
徹夜の、しかもそれが普段は絶対にかかわる事のないようなオペの後で、気分もテンションもまっ逆さまに急降下。
お嬢さん、って。
何事?
「おはようございます、香川先生」
クルリと首だけをそっちへ向けて、軽く頭だけを下げておく。
さっきのブレイドさんへの挨拶の10分の1くらいだ。
「黒塗りのベンツにあんな画に描いたようなボディーガードなんて、お前アレだろ」
「アレ、とは?」
首を傾げる私を見下ろしてニィと笑い
今、買ってきたばかりであろうコンビニの袋を持った手で指を差す。
人に指差しするな、と習わなかったのか、おい。
「どっかの組の娘だろ!」
してやったり顔を晒し、ピシャリと言い付けた香川は、ちょっとした少年のようだった。
当たらずとも遠からずの優秀な答えと香川の自信満にア然、しかも指先を一点集中して目が寄った。
「正解だな」
ふっ、と鼻息を鳴らし自分一人だけ完結して私を追い越していく香川の後ろ姿をみて、思わず笑ってしまった。
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