カルテ3ー2

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こちらへ、と、ブレイドさんが私を丁重に促す。 最上階よりひとつ下のフロア。 明らかに病院ではない面構えだ。 なんていうの?この絨毯。 簡単にはクリーニング出来ないような毛並み。 病院にこんなモノは必要ない、エタノール一滴だってこぼせないだろ、と言ってやりたいが病院だってサービス業界だ。 1泊いくらなんだろうか。 まぁ、白石にはそんなもの、微々たるもんなんだろうけど。 暗証コードを打ち込んでやっと病室に近づける。 なんて面倒なんだろうか。 壁には悠然と絵画が掛かっていた。 それはどこかの有名な画家が描いたモノなのかもしれないが、私にはさっぱり分からないけど。 扉の前に二人の男が立っていて 直ぐにその部屋だと分かった。 キッチリと頭を下げる二人に対して小さく手を上げたブレイドさん。 何もしなくてもスイと扉が開いた。 その瞬間に今まで何事もなかった心臓が、歪んで軋む。 ギシギシと まるで、スプリングの効きすぎるベッドの上でセックスをした時のような音をたてた。 「社長、有馬先生がおみえです」 目を疑った。 ベッドの上で座っている白石が、きらびやかに彩られた窓の外を見ていたからだ。 ……騙された。 あの、ズル賢さナンバーワンの香川に。 「……珍しいことも、あるもんだ、な」 息継ぎにズレがある。 久しぶりに聞いた白石の声は昔、耳に残っていたものとは、全く違っていて 確かに弱々しく そして、その音を出すのでさえも無理があるような そんな音。 肺の機能は殆ど失われているんだ、と思った。
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