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何が悲しいのか、それとも怒りなのか
とにかくこのまま自分だけ楽になろうとする白石を許せなかった。
私には心の余裕はこれっぽっちもない。
「離して、ブレイド!」
バキッ、っと骨と骨がぶつかる音が鳴る。
避ければいいじゃん。
「いったぃ」
「大丈夫ですか」
「なんで殴られたあんたが殴った方の心配すんのよっ!」
右手を振って痛みを散らそうとするけど
痛くて痛くて、収まらない。
「オペに支障出たらあんたのせいだから」
ギロリと睨んだのに
ブレイドさんはクスクスと笑い出す。
「なに笑ってんのよ!」
ポケットからハンカチを取り出し私に近付いたブレイドさんはその屈強な身体から出すパワーとは思えないくらい優しく涙を拭う。
「有馬先生を大事にしないと社長に怒られますので」
そう言ってニコヤカに笑う。
ブレイドさんのニコヤカの方が下のお人形のニコヤカよりもよっぽど本物だった。
「何が大事よ……
大事なんだったらあんなことさせないっつーの……」
舌打ち混じりに出たそれに、ブレイドさんがなにかを言おうとしたところへガチャリ、とドアが開いた。
「代表!」
ブレイドさんがあわてて私から離れてドアの傍へ移動する。
「なんで部外者がいるわけ?」
後ろを振り向いて驚愕。
なんだ、この、イケメン……。
しかも、若いでやんの。
「こちらは、有馬先生です」
上から下までを舐めるように見る、って正にこういう事だ。
切れ長の奥二重の目が値踏みをする。
……性格悪そうだな、こいつ。
「あー、ウチの歴代凄腕トップの闇医者ね
はいはい、思い出した」
やっぱり、めちゃめちゃ性格悪いじゃんコイツ……。
どうでも良いように空中で払われた手がそれはそれは横柄だ。
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