カルテ3ー2

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「代表!有馬先生は闇医者ではありません。 慎んでください」 いつもは何をしたって、怒っている時だって滑らかなその音が少しだけ波立った。 ブレイドさんのこの音を聞いたのは今ので2度目、だ。 代表と呼ばれるからには白石の血縁なんだろう。 そういえば、チビッこいのがいたなぁ、と思い出す。 あれが、これに成長しちゃうんだ。 へぇ、ふぅん。 やっぱり朱に交われば、ってヤツなんだねぇ。 と、今度はこっちが値踏みしてやる。 それが気に入らなかったんだろう。 「無免許で何人も切り刻んでりゃ、立派な闇医者だろーが、違うのか」 「代表!!」 荒げた音を出しているのに白石はピクリともしなかった。 嵌められた、と思ってたけど、ボスは何も嘘はついていないのかもしれない。 もう、少し話すだけでも 座っているだけでも 誰かの相手をするだけでも 辛い。 ……だからって、あんたの事は一生、この先もずっと大嫌いだけど。 「じゃあ、ブレイドさん、帰る」 この代表、かなり嫌なヤツだし 巻き込まれたくないし。 「有馬先生、下までお送りします」 「いーよ、一人でいけ」 「いえ、社長に怒られますから」 ブレイドさんの音はもう、滑らかなそれになっていた。 代表がベッドの奥のソファセットの一角へ腰かけ、当たり前のように煙草を咥えた。 奥のお付きがすかざずライターで火を灯す。 頭にきたのは、私だけではないはずだ。 ブレイドさんだって、絶対にカチンときたはず。
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