カルテ4

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【12年前】 ERでは沢山の症例が毎日山のように舞い込んでくる。 そりゃみんな、やりたがらないわけだ。 家に帰る時間がホントに無いんだから。 中でも香川はその代表的な医師だった。 素性も何も知らないけど、私のセンター試験の持ち点では入れなかった国立大学出身のドクターというだけで後はやけに毎日元気で相変わらずウザい。 まぁ、腕がいいのは認めるが、多少とも雑。 私の方が……と、考えてこれ以上はやめておく。 研修を抜けたら収まる職場は決まっていた。 私はずっと、一生そこでやっていくんだから。 周りの研修医は大学に残るもの、それぞれに散らばるもの、色々情報を交換し合っている。 私には不必要な事だ。 「おい、有馬」 「はい」 また、香川だ。 「ちょっといいか」 「……はい」 香川が最近私の周りを彷徨(ウロツ)くことが多くなったのは、私の指導医になりやがったからだ。 以前の指導医が"家庭の事情"とやらで九州の方へ行くことになったからだった。 なんだよそれ。 最後まで面倒見て行けよ、おい。 喉まで出かかったセリフだった。 「お前これさ、どうして整形呼ばなかったの?」 「は?」 香川がパソコンの画面をこっちに向ける。 夕べの救急外来での処置だ。 香川はこうやって私の外来処置に100%、いや250%は文句をつける。 「整形ドクター、夜勤にいなかったからですが、なにか」 「居なかったからね? じゃあ、次の日に回す事だってできただろ」 香川の顔が怒りモードにスイッチオーン。 あーぁ、と小さく溜め息を吐き出した。
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