カルテ3ー2

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陣内が小さく笑った。 こんな時になんて余裕のあるヤツなんだ。 ムカつく。 なんか、すっごく負けた気分だ。 いや、頼もしい限りじゃない、こんな凄い若手がいて。 陣内にはひょっとしたら何もかも及んでない気がしてきた。 「有馬さん、終わったんならここ、収拾してくださいよ」 「今やるわよ!」 なんとなくうっすらと笑った陣内の余裕がムカつく。 こいつの出所はいったいどこなんだぁ! 「有馬さん、なんかイライラしてます?」 「いーえっ、してませんっ」 髄内の固定はっ、この私よりも、私よりも! ウマイじゃないか! いや、頼もしいんだ、素晴らしい! いや、でもしかし! 「有馬さん、どうしました?」 「はいっ!?」 「眉間に皺、あーあー、それ、なかなか取れませんよー?痕」 静かだったオペ室がちょっとずつ解れてきて いつもの雰囲気に戻ってきた。 「有馬先生、ほんと、どうしたんですかー」 「うるさいわよっ ほら、さっさとやるわよ!」 ギリギリと歯を噛み締める私の音と 骨の中をギリギリと進む釘の音と どっちが大きいかくらいだ。 (まあ、それは冗談ですが……) オペが終わったのはもう太陽が出始めた頃。 患者の容態は落ち着いている。 お上がいるという事は、このままお上に引き渡すという事だ。
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