1025人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前ね……」
いつもこの"お前ね"から始まる香川の説教は最早救命の名物と化していた。
「インターンがこんな事できる訳ないだろーが。
誰が教えたんだよ誰が。
しかもこんっな小難しいやつ完璧に整復しやがって」
まただ。
たかだか鎖骨骨折の男児じゃん。
写真見てー、具合い診ればー、分かんじゃん。
しかもインターンって、古っ!
「いや、ですから以前整形外傷にいた時に」
「またかよ、お前……
誰か一緒に居たならまだしも、お前一人でやるなよ、頼むから」
なんだ。
結局そこか、オッサン。
研修一人でやらせてもし、血管や靱帯やらに何かあったらどう責任取るっていうんだ、ってアレかい。
指導医のミス、に導きたくない訳だ。
色んなとこでウザいしウルサイのはそこだったか。
あー、だから前任は九州行き?
かかわりたくないから?
まさか、そこまで?
笑うわ、マジで。
「以後気をつけまーす」
当たり障り無いのが一番だしね。
もうすぐここともサヨナラだしね。
ほんと、ウザいオッサンだ。
「お前、医療舐めてんだろ」
きっかけは香川が放ったたったのひと言だった。
最初のコメントを投稿しよう!