カルテ4

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「お前ね……」 いつもこの"お前ね"から始まる香川の説教は最早救命の名物と化していた。 「インターンがこんな事できる訳ないだろーが。 誰が教えたんだよ誰が。 しかもこんっな小難しいやつ完璧に整復しやがって」 まただ。 たかだか鎖骨骨折の男児じゃん。 写真見てー、具合い診ればー、分かんじゃん。 しかもインターンって、古っ! 「いや、ですから以前整形外傷にいた時に」 「またかよ、お前…… 誰か一緒に居たならまだしも、お前一人でやるなよ、頼むから」 なんだ。 結局そこか、オッサン。 研修一人でやらせてもし、血管や靱帯やらに何かあったらどう責任取るっていうんだ、ってアレかい。 指導医のミス、に導きたくない訳だ。 色んなとこでウザいしウルサイのはそこだったか。 あー、だから前任は九州行き? かかわりたくないから? まさか、そこまで? 笑うわ、マジで。 「以後気をつけまーす」 当たり障り無いのが一番だしね。 もうすぐここともサヨナラだしね。 ほんと、ウザいオッサンだ。 「お前、医療舐めてんだろ」 きっかけは香川が放ったたったのひと言だった。
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