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「ブレイドさん、私、一人で帰れますから」
やんわりと断っても必ず同じことを言う、
「有馬先生をお一人で帰したら私が叱られます」
ほんとに。
屈強なデカイ図体をしているのに、それに相反するような困り顔。
柔らかな物腰と、滑らかな口調。
だけどその名は"ブレイド"って。
なに?
映画の世界でしょ。
マジで。
本名は知らない。
私がこの人と出会った時はすでにブレイドさん、だった。
「お疲れの様子ですね、湯を張っておくように言い付けておきましたので、ゆっくりお休みください」
私の指定席は後部座席の右側。
ドアはロックされていて、自分では窓すらも開けることは出来ない。
要は、車も自分で乗り降りできない、ということだ。
囚われの身?
チガウチガウ、そーんな良いもんじゃない。
じゃあ、なに?
そうね、強いて言えば。
スレイブ。
よくある階級でしょ。
私は使い捨ての、スレイブだ。
自分の力量を遥かに上回る奇跡を出し続けなければ
この世から
消されてしまう。
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