カルテ4

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小田急沿線の住宅街。 駅からさほど遠くないところに停まった車は 自動で開くシャッターを潜り抜けてその中へと進む。 この辺でも一際大きな敷地に まだ新しいスタイリッシュな建物。 グレーの外壁のあちこちに見えながら隠れるカメラの数。 無駄だ。 はっきり言って勿体ない。 ブレイドさんが「お疲れ様でした」と言いながら 私を促し、そして、連れていくところは この家の主のところだ。 「社長、有馬先生が戻られました」 何十畳あるのか、と思われる広いリビングには 白石とその側近たち。 かくいうブレイドさんはその側近のトップだ。 こんな陽の高いうちから酒盛りとはいいご身分だ。 「ああ、望絵、久しぶりだな」 「そうですね、只今戻りました。 では、失礼します」 全く棒読みなそのセリフに、側近たちが顔を青くするのはいつものこと。 ブレイドさんはニコニコと笑い 白石は持っていたグラスを煽った。 主である白石をほぼ無視して与えられた自室へ入る。 もう、そっとしといてほしい。 いろんな事を。 香川の言う通り、あと3ヶ月。 あのオッサンの元で何事もなく過ごさなくてはならない。 マジで面倒。 服を脱ぎ捨てながら湯舟に浸かると、溢れ出るほどのお湯。 薄い桃色のそこに身体を沈ませて、はぁ、と深い息を吐いた。 気持ちよすぎ。 フロ。 表面の汚れを落とすならシャワーだけでじゅうぶんだけど、芯から休まるには浸かるのが最高だ。 何度も勝手に漏れる溜め息は身体が癒されている証拠だ。
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