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ちゃんと部屋まで与えられてるスレイブなんていないでしょ?
それは、私がツカエルからだ。
言うことをよく聞く利口なスレイブだから。
香川が……いつから切ってるんだ、と聞いた。
答えていいのなら、答えてあげるわよ。
「6年前」
ポツリと呟いただけの小さな音でも
陶器のタイルに共鳴する。
「医大に入って間もなしよ」
医大を卒業して、少し使える医者が育つのに、早くて3年。
3年と、いっても積み上げられた知識と少しずつ慣れていく経験があってこその3年だ。
そんな恵まれた環境下でさえ3年経っても"出来ない医者"なんていっぱいいるわ。
そこらじゅうに。
私はその3年をゆうに超えてる。
しかも、知識なんてほぼ無かった時代に
それこそ、見て、吸収しろと言われてきたんだ。
だから、私が香川に言ったことも嘘ではない。
目で吸収したんだ。
来る日も来る日も、違法の元で切り売りされる身体。
こんな世界があったことも知らない。
私はその片棒を担ぎ、いつのまにかそれを担っていた。
元はと言えば、医学部になんて入ったからだ。
従来の企画通りに欲を出さず法学部にすればよかったのに。
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